私たちは自然の声を聞けているだろうか

星の航海師ナイノア・トンプソンから考える、人と自然の関係
今年8月、日本各地で地震や局地的な豪雨など、さまざまな自然災害が発生しました。
被災された皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早く穏やかな日常が戻ることをお祈り申し上げます。
さて、暦の上では9月を迎え、日暮れの時間も日増しに早まってきました。秋は「実りの季節」であると同時に、「夜長」の季節でもあります。今回は書棚から一冊の本を手に取り、夜のひととき、ページをめくってみました。
ご紹介したいのは、『星の航海師ナイノア・トンプソンの肖像』(星川淳著)です。本作は、近代的なGPSなどの計器を一切使わず、星の動きや波、風といった自然からの情報だけを頼りに太平洋を渡る、ハワイの伝統航海師ナイノア・トンプソンを描いたノンフィクションです。
現代の私たちは、手のひらのスマートフォンを指一本で操作するだけで、自分の現在地や目的地を簡単に知ることができます。目印のない大海原を行く巨大な船でさえ、GPSなどの最新技術によって、正確な位置を容易に把握できるようになりました。
一方、古代の人々は自らの五感と経験を研ぎ澄まし、自然現象からさまざまな情報を読み取っていました。だからこそ、自然がもたらす恵みに感謝すると同時に、その恐ろしさや偉大さを常に身近に感じていたのだと思います。
それに引き換え、現代の私たちは自然と直接触れ合う機会が減り、その威厳や畏怖を感じる心が薄れてしまっているのではないでしょうか。
私たちは、自然からのメッセージを受け取る感覚を失い、自然環境を意のままに改変することで、豊かな農作物や利便性を手に入れ、大量の資源を消費してきました。しかし、その代償として、地球温暖化をはじめとするさまざまな環境問題を引き起こしています。
この本を読んでいると、自然は人間の言葉を話さないものの、実は多くのメッセージを私たちに伝えてくれているのだと、改めて深く考えさせられます。
イギリスの科学者ジェームズ・ラブロックが1960年代に提唱した「ガイア仮説」という考え方があります。地球上の生物と、大気や海洋などの環境が互いに影響し合い、地球全体がまるで一つの巨大な生命体のように、その環境を保っているという考え方です。「ガイア」とは、ギリシャ神話に登場する大地の女神に由来します。
地球の約45億年という途方もなく長い歴史から見れば、人類の文明などほんの一瞬、瞬きにも満たない時間に過ぎません。
このかけがえのない「今」という時間を大切に生きるためにも、私たちは今一度、自然が発する静かな語りかけに耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。

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