ネイチャーポジティブによるこれからの社会

ネイチャーポジティブが拓く、自然と経済の新しい関係
いま世界では、「脱炭素」や「カーボンニュートラル」に続く重要課題として、「ネイチャーポジティブ」が急速に注目を集めています。
ネイチャーポジティブとは、自然環境の破壊を減らすだけではなく、失われた自然を回復させて生物多様性を再生し、自然資本を増やす社会を目指す考え方です。
これまでの経済活動は、化石燃料に依存し、大量生産・大量消費・大量廃棄を進めて自然環境に対して大きな負荷を与えてきました。その結果、自然生体系の仕組みが崩れ、地球規模で生物多様性が失われています。
地球の表面のおよそ70%を占める海洋は、気候を安定させ、多様な生物を育んでいます。森林は、大気中の二酸化炭素を吸収するほか、雨水を土壌中に蓄え、土砂災害を防ぐ役割を持っています。さらに、自然環境は地域の文化形成に密接に結びついており、私たちの経済活動や生活は、自然の恵みによって成り立っています。
ところが近代以降の経済は、自然を無限に利用できる資源のように利用してきたことにより、地球規模で生態系の破壊が進んでいます。
ネイチャーポジティブは、単なる環境保護活動ではありません。経済や経営の持続可能性を考える上で、不可欠な視点になっています。
森林破壊が進むと土砂災害や洪水のリスクが高まります。また、熱帯雨林の伐採によって生物多様性が失われると、医薬品開発や新たな産業資源の可能性を失うことにもつながります。つまり、自然資本の損失は、将来的な経済の損失につながるため、企業経営においても無視できない課題となっています。
このような背景から、国際的にも企業に対して自然関連情報の開示を求める動きが強まっており、自然資本や生物多様性への影響を開示するための枠組みとしてTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が2023年9月に提言をまとめました。
これは企業が自然資本や生物多様性に対する依存や影響を客観的に評価し、それに伴うリスクや機会を投資家などに開示するための国際的な枠組みです。企業活動が自然に対してどのような影響を与えているのか、また、自然が劣化することによってどのような経営リスクが生じるかを可視化するものす。
投資家にとっても、短期的な利益だけではなく、自然との共生を実現する長期的な視点で経営を進めている企業を選別するための重要な仕組みになりつつあります。
ネイチャーポジティブは、地域経済の再生とも深く関係しています。日本には森林、河川、湿地、里山など、豊かな自然資源が存在していますが、一方で人口減少や高齢化によって管理が行き届かなくなっている地域も少なくありません。
地域資源を適切に活用し、自然と共生する産業を育てることは、新たな地域経済循環を生み出し、地域経済を活性化させる可能性が高まります。
例えば、森林整備による木材利用、間伐材や残材を利用した再生可能エネルギーの開発、減農薬など小規模循環型農業、エコツーリズムなどの新たな観光は、自然を保全しながら地域経済を活性化、再生する可能性があります。
特に北海道のように豊かな自然を持っている地域では、ネイチャーポジティブは大きな可能性を持っています。自然保護ではなく、自然そのものを地域の価値として再評価し、経済活動と結びつけることによって、自然を再生しながら成長する経済への転換を図ることができます。
自然と経済は対立するものではなく、むしろ相互に支え合う関係です。このような関係を再構築することは、これからの社会に求められる最も重要な課題の一つとなっています。

お問い合わせ
ESG経営や出前授業に関するお問い合わせは、お問い合わせフォームより承っております。
ご不明な点がございましたら、お気軽にご連絡ください。

