気候変動の中で進化する日本の農業

先端技術と環境への配慮が切り開く、新しい農業のかたち
3年前、国連のグテーレス事務総長は、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が来た」と警告を発しました。世界各国は、パリ協定の下で温暖化対策を進めてきましたが、米国のトランプ大統領がパリ協定から離脱するなど、その取り組みは停滞し、温暖化はますます深刻化しています。
日本も梅雨明けとともに猛烈な暑さに見舞われ、各地で気温が40℃を超えるとの報道が続いています。強い日差しは農作物の生育に重要ですが、今年の収穫に影響が生じるのではないかと懸念されます。
日本の農業は、古代からこの国の風土と文化を形づくり、人々の命を支え続けてきました。日本列島は、四季折々の豊かな自然と清らかな水に恵まれ、米をはじめとする数々の高品質な作物が丁寧に育てられてきました。
和食はユネスコ無形文化遺産に登録され、世界中で高く評価されていますが、その背景には、日本各地の農家の方々が培ってきた高度な技術と情熱があります。
しかし、日本の農業は、高齢化や後継者不足といった深刻な課題を抱えています。農業従事者の平均年齢は67歳を超えています。さらに、担い手不足によって離農が進み、耕作放棄地が増加しています。その結果、野生動物が人里に出没するなど、深刻な被害も発生しています。
世界の食料情勢の緊迫化や気候変動、原材料費の高騰などの影響を受け、日本の食料自給率(カロリーベース)は約38%という低い水準にとどまっています。
こうした試練に直面する一方で、日本の農業は新たな進化を遂げようとしています。その最前線にあるのが、「スマート農業」の導入です。
ドローンによる農薬散布や施肥の最適化、衛星測位情報を活用した自動運転トラクター、AIを活用した収穫時期の予測や病害虫の検知など、最新テクノロジーの導入が急速に進んでいます。
従来、熟練農家の「勘」と「経験」に支えられてきた技術がデータ化され、作業の省力化と農作物の高品質化が同時に実現されることに期待が集まっています。
さらに、若い世代や異業種からの参入、環境に配慮した「有機農業(オーガニック)」への転換など、多様な働き方や価値観も生まれています。
単に農作物を生産するだけでなく、加工や販売までを手がける「6次産業化」や、高品質な日本産農産物を海外へ展開する輸出拡大の取り組みも、勢いを増しています。
日本の農業は、伝統的な営みを受け継ぎながら、先端技術と環境への配慮が調和する新たな産業へと脱皮を図ろうとしています。
私たちが日々いただく食事の裏側にある変化に目を向け、地域や国産の食材を選ぶことが、命の糧を生み出す日本の大地と、それを守る農家の人々を未来へつなぐ第一歩となるはずです。

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