持続可能な未来へ――人類の歩みとESGの役割

豊かさと資源の限界

 21世紀も4分の1が過ぎた現代は、これまでの人類の歴史のなかで最も豊かな時代であると言われています。その一方で、私たち人類は、この数百年、いや、数十年の間に地球の持つ資源の大半を使い尽くしてしまったのではないかと指摘されています。

 人類は生物分類上「ヒト属」に属し、およそ200万年前にアフリカでアウストラロピテクス属から分かれ、40万年から25万年前にホモ・サピエンスとなりました。人類の祖先の一つであるホモ・サピエンス・イダルトゥやネアンデルタール人はすでに絶滅し、今の私たちが生き残っています。遺伝学や考古学によって人類の誕生からホモ・サピエンスに至る歴史が解明されてきていますが、いまだに未解明の部分も多く残されています。

 人類の祖先は森のなかで暮らしていましたが、やがて平原に進出しました。二本足で立ち上がったことによって、それまで移動に必要であった前足が解放され、手として道具を使用することができました。初期の人類が使っていた道具は、落ちている木の枝や石をそのまま使っていたと考えられます。やがて、より使いやすいように道具を加工し、その道具を使って、さらに新しい道具を生み出すことができるようになりました。このように、人類の文明の歴史は、知恵と工夫によって道具を進化させることで築かれてきました。その結果、現在のように資源を大量に消費し、快適な生活環境を形成することができたのです。

現代社会が直面する課題と持続可能な開発

 しかし、現代社会の繁栄の一方で、自然環境には極めて大きな影響が及んでいます。異常気象、資源の枯渇、食料問題など、さまざまな課題にも直面しています。そのような課題を解決し、豊かな生活をすべての人々が享受できるのかという問いに対して、「持続可能な開発(Sustainable Development)」が求められています。

 世界には、人口が減少している国や地域がある一方で、急激に増加している国や地域もあります。経済的な豊かさも、宗教や文化も国や地域によって異なります。自然の動物や植物などの環境を非常に重要視する人々がいる一方で、環境を守ることよりも、それを可能な限り消費し、豊かな生活を求める人々もいます。どれが正しく、どれが間違っているのかを、現在生きている私たちが判断することは難しいように思います。

 重要なのは、「今を生きる自分のことだけではなく、子どもや孫たちの暮らしも大切に思う気持ち」ではないでしょうか。アメリカの先住民族には、「七世代先のことを考えて行動せよ」という言い伝えがあります。1世代をおよそ30年から50年とすると、七世代はおよそ300年前後になります。遠い将来のことのように思われますが、人類の進化の歴史から見れば、ほんの一瞬にすぎません。

 300年前の日本は、江戸文化が花開いた元禄時代でした。経済活動が活発になり、芸術や学問が著しく発展した時代です。現在の私たちに必要なのは、少し立ち止まり、自分だけの利益や都合だけを考えるのではなく、他人の幸せを考えて行動することではないでしょうか。

未来を見据えた選択――ESGの重要性

 ESGの目的は、環境(E)、社会(S)、ガバナンス*(G)が調和することを目指す点にあります。「調和」という言葉をキーワードに、私たちの暮らしや経済を見つめ直していきたいと思います。

※統治、統制と言う意味ですが、ビジネス用語では健全な企業経営を指しています。

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